「やっぱ、分厚い鉄板で焼くとめっちゃ美味しいよねぇ」
って話、聞いたことありませんか?
なぜ分厚い鉄板で焼くと美味しいのでしょう?
まず最初に「鉄の特性」と「料理」の関係について、考えてみました。
熱伝導率というのは、熱の伝わるスピードのことです。
熱伝導率が高ければ、早く温まりますが、早く冷めます。
熱伝導率が低ければ、温まりにくいけど、冷めにくいということです。
一般的に調理器具で使われる金属の熱伝導率は、銅>アルミニウム>鉄です。
たとえば、早く、お湯を沸かしたいときは、鉄鍋より、熱伝導の高いアルミの鍋や銅鍋を使った方がいいですし、最後まで熱々のまま食べたいステーキや、ナポリタンスパゲッティなどは鉄板のままテーブルに出せば、鉄は冷めにくいのでアツアツのままでいただけるということになります。
熱伝導率が低い鉄は、温まりにくいけど、冷めにくい、つまり
という特性があります。
冷めにくい特性と関連して熱容量というのがあります。
熱容量というのは、鉄板が蓄えられる熱の量です。
そして、この計算式で表されるように、重ければ重いほど熱容量は大きくなります。
熱容量=質量x比熱
比熱とは、単位体積当たりの熱量のことで、その物質ごとに決まっています。
特性1で上げたように、冷めにくということに近いのですが、熱が安定する、熱ムラがなくなるということです。
料理をされる方は、よく聞く言葉だと思うのですが、
「パスタはたっぷりのお湯で茹でなさい」とが
「揚げ物は多めの油であげなさい」とか。
少量のお湯に一気にパスタを入れたら、お湯の温度が下がって、ゆで時間が長くなり、アルデンテに仕上がらなかったりしますよね。
少量の油に、冷たい唐揚げの鶏肉を入れたら、油の温度が一気に下がってカラッと揚がらなかったりしますよね。
私も何度も経験しておりますとも!
この、たっぷりのお湯、多めの油というのが、分厚い鉄板でいうところの熱容量が大きいということなのです。
アツアツ鉄板6mmと普段使っている1.5㎜弱の鉄のフライパンでどれほど熱容量が違うのか実験してみました。
*実験当時は熱容量と同じ意味で蓄熱量という言葉を使っていました
鉄板とフライパンをそれぞれ3分ずつ、同じ火力で熱します。
そして、10回、水をスプレーします。
6㎜のアツアツ鉄板では、スプレーした瞬間から水蒸気になってしまい、10回目でも蒸発の速度はほぼ変わらず、水は残りません。
フライパンは、最初から、すべての水が蒸発することはなく、スプレーのするたびに蒸発量は減っていき、しばらく水は残っています。
同じ鉄でも薄いと、つまり熱容量が小さいと、冷めやすく、一度冷めてしまうと、温度が回復しません。水があるということは100度以下ということです。
6㎜の鉄板では、熱容量が大きいので、多少の水では温度が下がらず、100度以上をキープし続けることができていました。
お詫び:フライパンは普通3分も温めませんが、鉄板と比較するために怖々やってみたので、ちょっとビビって、フライパンの回のスプレーの速度が速いです。厚い鉄板をえこひいきしているようで、すみません。
広い空間が必要な建物に、鉄骨建築が多いのは、鉄が丈夫だからです。
倉庫とか体育館とか商業施設とか・・・
鉄骨の柱や梁を使えば、たくさん柱を立てなくてもいいわけです。
アツアツ鉄板は、建築用の鉄骨を使っています。
黒皮鉄板、SS400、放射能検査済、調理器具としては度を越えた丈夫さです。
”調理器具が丈夫”というのは、料理の味には直接関係のないメリットではありますが、使えるヘラなどに制限がないので、広い意味では、美味しく食べるためには大事な特性なのかもしれません。
もんじゃ焼きなど、鉄ヘラでガシガシこすってもビクともしません。
傷が徐々に進んでいくフッ素加工のフライパンって、買い替え時悩みませんか?そのたび処分するも結構ストレスなんですよね。
また、同じ鉄でも形が自在にできる鋳鉄(イモノ)は、一般にヒートショックや衝撃に弱いと言われています。
鉄板は、厚いほど、冷めにくく、熱ムラがなく、安定した熱を保つことができる。おまけに超丈夫。
じゃあ、このような特性を持った厚い鉄板を使って料理をするとどうなるか?ということを次に考えていこうと思います。
参考文献:主婦と科学(家庭科学総合研究所カソウケンほぼ日出張所)